広報ふくさき 令和3年(2021年)3月号 13ページ ---------- 福崎町文化財だより(79) 1ページ目 ---------- 令和2年度 埋蔵文化財発掘調査速報 社会教育課文化財係では、町内の各種開発に伴い、埋蔵文化財調査を行っています。 令和2年度は、主に高岡福田地区ほ場整備事業に伴い、工事によって埋蔵文化財が影響を受ける箇所について、記録のための本調査を行いました。また、山崎地区ほ場整備事業計画があることから、試掘調査にも着手しています。 奈良時代の大きな掘立柱建物見つかる(桜地区) 令和2年7月から令和3年3月まで、高岡福田地区ほ場整備事業に伴う埋蔵文化財発掘調査を行いました。 桜地区では桜ひがしはた遺跡、桜たけのご遺跡、桜遺跡を調査し、奈良時代を中心とする遺構を確認することができました。また、神谷地区では観音堂遺跡、長野地区では長野おいだに遺跡の調査を行い、これまで知られていなかった地域の歴史を掘り起こすことができました。 桜ひがしはた遺跡 桜ひがしはた遺跡は、七種川左岸に立地する遺跡です。今回の調査で、奈良時代(約1300年前)を中心とした遺構が見つかっています。調査区からは、南北を旧河道(昔河川だった場所)に挟まれた微高地上に掘立柱建物4棟以上、工房跡1棟、土坑2基などが確認されました。この他、奈良時代の合口甕棺も見つかっており、町内では初めての発見となるめずらしいものです。 掘立柱建物のうち、直径70センチメートルをこえる比較的大きな柱穴をもつ桁行5間、梁行2間以上のものが見つかったことから、大型の建物が建てられていたことが分かります。また、この建物とほぼ同じ主軸をもつ3間×2間の掘立柱建物が1棟、主軸が異なる3間×2間の掘立柱建物が1棟見つかっています。 調査区の西端から確認された建物は、焼土や焼けた台石が確認されたため、工房跡と考えられます。工房跡と掘立柱建物とが切りあっており、土層の堆積状況から、工房跡の方が先につくられたと考えられます。 出土遺物は、製塩土器など、一般の集落からは出土しない土器が見つかっています。 ほかにも須恵器や土師器が出土しており、これらは奈良時代の遺物と考えられます。 大型の掘立柱建物が出土したことと、製塩土器などの遺物が出土していることから、桜ひがしはた遺跡は、官衙(役所)的な遺跡であると位置づけることができ、むかしの高岡地区の中心地のひとつであったと考えられます。 また、近世の木簡も出土しました。 写真=遺構全体写真 写真=合口甕棺墓出土状況