広報ふくさき 令和6年(2025年)5月号 17ページ ---------- 第二弾 『遠野物語』を巡る  福崎町の友好都市、岩手県遠野市です。令和6年8月で福崎町との友好都市共同宣言から、10周年を迎えます。  誌面をお借りして、4月号から始まった全5回の連載です。今回は第二弾となります。 『遠野物語』  福崎町出身の民俗学者柳田國男が発刊した119話の短編集『遠野物語』。この『遠野物語』と由縁のある場所や情景が現在も残り、遠野市民の歴史や文化の根底に息づいています。また、観光資源としても貴重な財産であり、市内各地にある『遠野物語』の舞台になった場所には、多くの観光客が訪れています。 写真=朝焼けに染まる遠野盆地(妖怪の時間から人間の時間へ) カッパ淵 写真=カッパ淵  『遠野物語』には、カッパや天狗といった妖怪、山の神、水の神、ザシキワラシやオシラサマなど独特な信仰や風習と共存している遠野の生活が記されています。  この中でも、遠野で最も有名な場所の一つがカッパ淵です。ここには、川へ引きずり込もうとするいたずら好きなカッパがいましたが、村人に捕まり、いたずらはしないと固く約束したという話が残っています。似たような話は、全国各地に残っており、柳田も『遠野物語』の注釈に「カッパがいるという所には、必ずこの話がある」と書いています。  一方、全国には無い『遠野物語』独特のカッパに関する記述もあります。遠野のカッパは、緑色ではなく、赤い色をしています。全国でも、赤いカッパは福崎町のガジロウと遠野のカッパだけではないでしょうか。 写真=カッパ捕獲許可証 カッパ捕獲許可証  さて、ご紹介した遠野のカッパは、実は捕獲することができます。カッパを捕獲するためには、遠野市観光協会が発行している「カッパ捕獲許可証(税込220円)」を携帯する必要があります。さらに、このカッパを捕獲することができれば、1000万円の懸賞金が遠野テレビ(遠野市内のケーブルテレビ)から支払われます。生け捕りやカッパ淵産のカッパであること等、細かな条件がありますが、遠野にいらした際は、カッパ捕獲にぜひとも挑戦していただければと思います。夏には餌にキュウリを付けた釣り竿を設置して、いつでも捕獲できる体制を整えてお待ちしております。 オシラサマ  オシラサマという、もう一つ有名な物語をご紹介いたします。人間の娘と馬が恋をしましたが現世ではかなわず、天に昇り結ばれるという悲恋を描いた物語です。亡くなった娘は、親の枕元に立ち、蚕を育てるように伝えました。この後、蚕の餌となる桑の木を材料に馬や人の顔を彫り、服をかぶせてオシラサマとして祀るようになりました。 写真=遠野伝承園のオシラ堂  このオシラサマが四方の壁一面にかざられ、圧巻の様相を呈しているのが、遠野伝承園のオシラ堂です。真夏に訪問しても、この部屋の中だけは肌寒く、神聖な場所として、ただならぬ雰囲気を感じることができます。遠野伝承園は、本年4月にリニューアルしたばかりです。バリアフリー化等、快適な環境を整え、郷土料理をさらに楽しめる空間になりました。 遠野市立博物館  ご紹介した『遠野物語』の現地に訪問する前に、ぜひ寄っていただきたいのが、遠野市立博物館です。遠野市立博物館では、『遠野物語』を民話集としての価値に加え、「山」から「里」、そして「町」へ展開していった遠野の歴史を語るものとして捉え、物語と歴史の関わりを新たに表現しています。また、大画面シアターで見るアニメーションも必見です。「水木しげるの遠野物語」等、クオリティの高いさまざまな物語を楽しむことができます。 写真=遠野市立博物館  今月は『遠野物語』と共に遠野市内の観光名所をご紹介しました。次号は、遠野の四季折々を彩っているお祭りについてご紹介いたします。 (遠野市役所観光交流課)