其の六
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辻川の部落の中ほどを、南北に貫いた堰溝については、前にもちょっと語ったが、この溝に沿って下流に下っていくとそこに小さな五、六坪ほどの森がある。美しい藤の花がそこの樹々にからまって咲く季節になると、子ども心にも和やかな気持ちになったものである。
帰郷するごとにそこを訪れるのであるが、そのたびに変わってゆくその森のさまも、時代の移り変わりを思わせる。
森には小さな稲荷様の祠があった。・・・当時は本当に小さな祠であって、その森へのなつかしみが稲荷信仰や、狐の研究に心を寄せるようになったもとであった。
(故郷七十年 稲荷信仰のこと)