其の八
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私の生家松岡氏は、辻川の大庄屋三木氏よりも来住が少し古いといわれ、先祖は兄弟で東西の二組に分れ、三木家の近くにあるのは主として兄のほうの系統、西組の弟の筋は家が多くてみな小さく、私の生まれた家はその中の東端であった。この方の本家は「柿の木屋」といって柿が多く、・・・赤穂の家老の大石家と縁つづきで、大石主税が母の里方の但馬へ行く路で一夜泊まったという伝説がある。私の家などは、ここからの孫分家であった。この「柿の木屋」の少し東手に「ます屋」といったのが、やはり同族で宿屋となり、また、人力車の立場(中継所)でもあった。
(故郷七十年 東京の印象)